
奥州市水沢の住宅街に株式会社SORAie(ソライエ)はあります。
建物に入ると綺麗にリノベーションされた空間が広がります。キッズスペースやダイニングキッチンもあり、なんだか家づくりのイメージが膨らむような事務所。

SORAieを2017年に立ち上げた代表の高橋透さん。
奥州市内を中心に、注文住宅の設計・施工をメインに、不動産販売なども行なっています。
会社を設立するまで、住宅業界に15年間勤めていた高橋さん。もともとは現場監督で入社し、リーマンショック時から営業に転向。グループ会社に1000人以上いる営業マンの中で、営業成績全国2位になったこともあるそうです。
そうした華々しい成績を挙げていた高橋さんですが、当時いた会社の住宅の建て方に段々と疑問を感じるようになったと言います。
「大手だと、どうしても件数に固執してしまうところがあって。本来、家づくりには、お客様一人ひとりにドラマがあるんです。やっぱり私は、そこに寄り添っていきたいと思ったんです」
高橋さんは、長年勤めた会社を退社し、地元である奥州市でSORAieを開業します。

「前職では、家を建てることでまちづくりに貢献していると思っていたんです。ただ、本社が地元にない会社だと、どんなに地元で良い家を売っても、地域にお金が落ちてないなと思って。今は地域の業者さんや大工さんと切磋琢磨して、家づくりをしています」
SORAieの一番の特徴は、見積もり書の作り方。材料費や人件費など、家づくりにかかるすべての費用をお客様に対し、明確に提示している。
「住宅は一生に一度の大きな買い物のはずなんですけど、実は契約があまりにも不明確なんです。車を買う時は、スペックもオプションも全て見積書に書かれているのに対して、住宅って建設業特有の大雑把な見積もりで。お客様は訳がわからないんですよね」
確かに一般の方にとって家づくりは何度も経験することがないからこそ、分からない部分が多い気がする。
「一般的なハウスメーカーの場合だと、作るものが決まる前に契約からスタートするんですよ。当社の場合は、まずは最初に契約してくださいというお話はしないですね」
「お客様の不安要素を取り払って、しっかり一つ一つ決めた上で、最終的に作るものが決まってから契約をしています。だから、その後のトラブルもないんです」
そうした丁寧なコミュニケーションで積み上げたお客様の信頼感から、SORAieで引き受ける仕事のほとんどが、建てた方の口コミからくるものだという。

だからといって、SORAieで大切にしていることは、お客様の要望を全て聞くような御用聞きではない。
「家は夢が先行する話なので、営業マンもお客様もお金の話は嫌うんです。でも、ところどころで予算や理想に叶わない部分をしっかりと話すようにしています」
「お客様も、もう何千万の話になってるので、10万20万ならやろうかなっていう会話が普通に出るんですよ。そうではなくて、『今財布から出しますか?』っていう話もして、冷静に戻してあげるところも大事だと思ってお話しています」
そんな誠実な対応をする高橋さんに惹かれて入社したのが、経理担当の佐藤芽依さん。
以前は、自動車関係の仕事をしていたが、1年前にSORAieに入社した。

「面接は社長が担当してくれて。人柄が良かったんですよね。今まで出会ったことがないような社長で(笑)なんでもフランクに話してくれたので」
社長の人柄の良さを感じたエピソードがある。
「新築の引き渡しの時に、お客様にテレビの壁掛けを設置して欲しいと頼まれたことがありました。普通の会社だったら追加料金を取るところなんでしょうけど、社長はサービスで取り付けしていました。お客様が新しいソファーを運んできたら、一緒に組み立てて設置することもありました」
「家が出来上がったら終わりではなくて。自分が家を頼むんだったら、そういう人がいいですよね」
SORAieに入ってみて、どうでしたか?
「温かい会社でした。何かあれば本当にみんな助けてくれて。それぞれやってることは違うんですけど、役職に関わらず、何かあればすぐ聞ける環境です」

「上棟式で使うものを直前で購入しないといけないときがあったんです。ただ、いつもの会社では在庫が見つからなくて。そのときに、総務の先輩も、設計の人も出てきて、ここの会社だったらあるよと教えてくれて。いつも助けてもらっています」
少人数の会社だからこそ、お互い助け合って仕事を進めている。
最近はみんなでお弁当を食べているそう。
「近くのお弁当屋さんに頼んで、みんな事務所でお昼を食べています。仕事とかプライベートの話もして。本当にみんな温かいんですよ」

SORAieの取材をしていて、社員さんがそれぞれ自社のことを『温かい会社』と表現していたのが、印象的です。
「みんな温かいなって思うんですよね。スタッフの人たちも、お客様も、業者さんも温かくて。雰囲気が良い環境の中で仕事させてもらってるなっていつも思います」
そう話すのは、入社3年目の柴川樹利亜さん。営業事務を担当し、一般事務やお客様対応、建物の完成検査の立ち会いなど幅広く営業のサポートを行なっている。

柴川さんは、ここに入るまで様々な仕事を経験したそうですが、SORAieの環境は恵まれていると話します。
「住宅は未経験だったので、最初はどうしよう...って戸惑いはありました。でも周りのみんなに全然ゆっくりでいいからと言ってもらって。最初は甘えてましたね(笑)」
「ただ、家のことについてのお客様の質問に答えられなかったことがあって。よくないなと思って、それからはショールームを見学に行ったり、自分で調べたりして勉強を続けています」
社内の資格補助を活用して、福祉住環境コーディネーターの資格も取得し、少しづつ知識を広めている。

柴川さんは、SORAieで働く良さをお客様との距離感に感じている。
「お客様とプライベートのときに偶然どこかのお店で会ったときも、『SORAieさん!』みたいな感じで、声をかけてくれたりとか。家を作り終わった後も繋がりがあって、友達のように声をかけてれるのが嬉しいです」
どうしてそういう関係性になるのだろう。
「やっぱりお客様に本当の意味で寄り添ってはいるからだと思います。お客様がこうしたいというのには答えて、できる限りかなえてあげようとします。かといって、めちゃめちゃ高い予算なわけでもない。そのお客様に見合った予算の中で一番いいものを、理想に近づけて作っています」
「引き渡しに立ち会うこともあるんですが、お客様の感想を直接聞いて、本当に満足されている様子を見ると、この会社で働いていていいなって思いますね」

SORAieは、オーダーメイドで年間15〜20棟の家づくりを行っている。
代表の高橋さんは、佐藤さんや柴川さんのような若手社員と、外部で施工を担当する30〜40代の若手職人との若いチームで、一緒に成長しながら家づくりに取り組んでいるという。
どんな人が向いていると思いますか?
「未経験でも大丈夫なので、お客様のことを自分ごとと捉えられる人だと良いと思います」
「例えば、お客様の家のお金のことも、自分が払うわけじゃないから、いいやこれでって投げてしまえば、お客様は思ってたのと違うなってなるでしょうし。自分だったら本当に払うのか、自分が住むんだったらこうした方がいいんじゃないのか、というのをその場でちゃんと提案できるかどうかが大事だと思います」

SORAieでは今後、未経験者の研修サポートとして、大手ハウスメーカーのフランチャイズの加盟を検討している。入社後1年間は、研修会やオンラインの講座で学びながら、規格が決まった住宅を売り、経験を積むことができる。
「やっぱり今うちでやっている注文住宅は経験値がないとできないことだと思うので。それをいきなり新人にお願いするのは難しい。住宅っていうのはどういうものか、こういうふうにしたら売れるのかっていう基礎を作るために学べる仕組みを作りたいと思っています」
高橋さんは、前職のハウスメーカー時代から新人の営業マンの教育にも携わってきた。
「まずは石の上に3年というわけじゃないけれども、その中でいろんなものを把握してお客様に提案できるようになれればいいのかなとは思っています」
高橋さん自身も新人時代はお客様の信頼を得るために色々と工夫したと言う。

「お客様からしてみれば、入社1ヶ月でもプロとして見ますよね。だから、営業知識ゼロだった当時の私は、完全武装してお客様のところに行ってましたね。バインダーに資料を詰め込みまくって、何を言われても答えられるように、大事典を自分で作ったりして」
「私は知識がないなら補えばいいという感覚なので。そういった準備は誰でもできることだと思うんです。そうやってお客様との信頼関係を築いてほしいですね」
最後に、代表の高橋さんに今後の展望について伺った。
「今はやっと落ち着いてきたところで。ほんと創業して3年目まではもうとにかくがむしゃらに仕事をしてきた状況なので、これからは働く環境やチームづくりに力を入れていきたいですね。それがお客様のためになると思うので」
住宅会社では珍しく、水曜日の他に日曜日を定休日としているのもそのひとつ。
「日曜休みにしているのは、従業員に家族サービスやプライベートの時間をとってもらいたいからです。ありがたいことに、お客様にも気遣っていただけて、日曜日に連絡が来るというのはほとんどないです」
「前のハウスメーカーでは休み関係なく連絡がバンバン来ていたので。それが当たり前ではなくて、一人の人としてお互いに気づかえる関係性が大事だと思いますね」
従業員も、お客様もお互いへの心遣いがあるからこそ、心地よく働けそう。

「お客様の家を建てる商売なので、その目標に向かって社員が一丸となるのは当然ですけども、それと二人三脚でお客様も一緒に歩んでもらえるような、組織になっていきたいです」
お客様も従業員も関わる事業者も、家づくりを通して、温かい関係性を築いていく。
何も包み隠さずに、真摯に人と向き合える仕事だと思います。
(取材:櫻井 陽)